多発性骨髄腫と生きる

患者さん・ご家族のみなさまへ

多発性骨髄腫の診断

【編集協力】千葉大学医学部附属病院 血液内科 科長・診療教授
 堺田 惠美子 先生

診断必要な検査

多発性骨髄腫の診断をするために、血液検査、尿検査、画像検査、骨髄の検査などが行われます。
それぞれの検査では、次のようなことを調べます。

血液検査

赤血球白血球血小板ヘモグロビンなど、血液成分の数の異常

血液中のタンパク(総タンパク)やカルシウムの量

異常なタンパクであるMタンパクの量

臓器機能の程度

尿検査

タンパク尿の有無

尿に出ているMタンパクの量

画像検査(全身のエックス線検査、CTMRIPETなど)

骨に異常がないかどうか

骨髄以外の場所(皮膚の下や臓器)に骨髄腫細胞の塊(しこり)がないか

感染症の合併の有無など

エックス線検査を受けている多発性骨髄腫患者さん

骨髄検査(骨髄穿刺生検

骨髄にどれくらい骨髄腫細胞があるか

エックス線検査を受けている多発性骨髄腫患者さん
骨髄穿刺をうけている多発性骨髄腫患者さん
骨髄穿刺をうけている多発性骨髄腫患者さん

多発性骨髄腫かどうかは、骨髄腫細胞Mタンパクがあるかどうか、そしてそれによって体に影響(障害)が出ているかを、いくつかの検査結果をもとに総合的に判断します。
以下のような状態が確認されたとき、「治療が必要な多発性骨髄腫(症候性多発性骨髄腫)」と診断されます。

骨髄の中に、形質細胞が10%以上みられる

骨や骨髄以外の場所にも、骨髄腫細胞が確認される

骨髄腫細胞が原因で、臓器への影響(高カルシウム血症腎機能障害貧血骨病変など)が出ている

将来的に病気が進行するリスクが高いと考えられる指標が見つかっている

これらの検査結果をもとに、医師が総合的に診断を行います1)

病気の進行リスクが高くなる「SLiM」指標

治療が必要かどうかの判断には、以下の3つの進行リスクの高い状態が特に重要とされています。
これらは、その頭文字をとって「SLiM(スリム)」と呼ばれることがあります。

S 骨髄の中の骨髄腫細胞の割合が60%(Sixty percent)以上である
Li:血液中の遊離軽鎖(L鎖)の比(Light chain ratio)に異常がある
MMRI画像検査で複数の骨病変MRI total lesion)が確認されている

検査の結果からこれらの指標が見つかると、まだ症状が出ていなくても治療が必要と判断されることがあります。

医師から説明を受けている多発性骨髄腫患者さん

出典

1)日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p24-30, 文光堂. 2024

多発性骨髄腫の前段階について

多発性骨髄腫には、症状がまったく出ていない軽微な検査異常のみを認めるごく早い段階から、より進行した臓器障害や貧血、骨折などの症状が現れて治療が必要になる段階まで、さまざまな状態があります。

血液検査でMタンパクという異常なタンパクが見つかっても症状がなく、ほかの病気の影響もない場合には、「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)」と診断されます。
また、Mタンパクが増え骨髄の中の形質細胞が多くなっていても症状が現れていない場合は、「くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)」と診断されます。

MGUSとSMMは、ともに多発性骨髄腫になる前の段階と考えられています。多発性骨髄腫へ進展する可能性が高いと考えられるSMMを除き、一般的にMGUSやSMMは、すぐに治療を始めることはありません。将来的に多発性骨髄腫に進行する可能性があるため、定期的に検査を受けて経過を見守ることが大切です。

多発性骨髄腫病期とは

検査の結果をもとに、多発性骨髄腫は3つの病期(ステージ)に分類されます。
この病期によって、診断後の経過をある程度予測することができます。
病気が進行すると、血液中のアルブミンが減ったり、β2ミクログロブリンが増えたりします。
これらの数値をもとにした分類を「ISS分類」といいます。

ISS分類1)

ステージ 基準
アルブミン3.5g/dL以上
β2ミクログロブリン3.5mg/L未満
ステージⅠでもⅢでもない
β2ミクログロブリン5.5mg/L以上

日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024より作表

最近では、さまざまな治療薬が使えるようになり、患者さんの予後(病気の進み方や見通し)が改善されています。
そのため、より詳しく分類するために、以下の2つの情報も加えた「改訂版ISS分類(R-ISS分類)」も使われています。

進行しやすい染色体異常があるかどうか

乳酸脱水素酵素(LDH)という物質の量(骨髄腫細胞の活動性を示す)

R-ISS分類1)

ステージ 基準
アルブミン3.5g/dL以上
β2ミクログロブリン3.5mg/L未満
染色体異常がない
LDH正常レベル
ステージⅠでもⅢでもない
β2ミクログロブリン5.5mg/L以上
染色体異常あり
LDH高レベル

日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024より作表

出典

1)日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024

多発性骨髄腫予後

多発性骨髄腫は比較的ゆっくり進行する病気とされています。
急に悪化することは少なく、病期(ステージ)Ⅲの患者さんでも、約4割の方が5年以上生存しているというデータもあります1)
日ごろから体調の変化に気を配り、気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。

薬を内服している多発性骨髄腫患者さんとご家族

出典

1)日本骨髄腫学会 編: 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版. p31-33, 文光堂. 2024

このページは、多発性骨髄腫の疾患に関する情報サイトです。医療に関する判断は、患者さんの特性を考慮し、医師と患者さんとの相談の上で行うものです。
多発性骨髄腫について、詳しくは医師にご相談ください。多発性骨髄腫に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法などを推奨するものではありません。

NP-JP-NA-WCNT-250021 2025年9月

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