多発性骨髄腫と生きる

患者さん・ご家族のみなさまへ

心のケア

【編集協力】千葉大学医学部附属病院 血液内科 科長・診療教授
 堺田 惠美子 先生

病気によるストレス対処法

多発性骨髄腫などのがんと診断されることは、患者さんにとって非常に大きなストレスになります。
気持ちが落ち込んだり、不安や無力感にさいなまれたり、眠れない・食欲がわかないといった状態になることもあるでしょう。このような気持ちの変化は、誰にでも起こりうる自然な反応です。
多くの場合は、2週間ほど経つと、少しずつ気持ちが落ち着き、これからのことを考えたり、日常生活に目を向けられたりするようになっていきます1)

ただし、以下のような状態が長く続くときには、心のサポートが必要かもしれません。
気持ちの落ち込みがなかなか改善しない
強い不安や無力感が続いている
不眠や食欲の低下がつらい
このような場合には、がんの心の問題を専門にサポートする「精神腫瘍医(せいしんしゅようい)」への相談がおすすめです。

相談できる専門医を探したいときは

全国の精神腫瘍医の一覧は、「日本サイコオンコロジー学会」のホームページで公開されています。
出典
1)宮島 加耶 他: ストレス科学研究. 32, 4-9, 2017

サポート制度相談窓口

がん相談支援センター

全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている無料の相談窓口です。
病気のこと、治療のこと、仕事やお金のことなど、看護師やソーシャルワーカーが幅広く相談に応じてくれます。

ピアサポート(患者会)

ピアサポートとは、「同じ立場の人同士の助け合い」を意味します。
患者会では、勉強会や交流会を開催し、情報交換や支え合いの場を提供しています。
多発性骨髄腫患者さん同士の情報交換

ご家族が感じやすい
ストレス対処法

患者さんの治療や療養生活を支える中で、ご家族がさまざまなストレスや葛藤を感じることも、決してめずらしいことではありません1)
それは、大切な人を思うからこそ生まれる自然な感情でもあります。
患者さんのご家族が抱える葛藤(一部抜粋)1)
家族の間で、つい傷つけるようなきつい言葉や怒った口調になってしまうことがある
患者さんの治療方針について、意見が合わないことがある
患者さんへの対応の仕方に家族間で違いがあり、意見が合わないことがある
家族の中に、本来果たすべき役割を十分に果たしていない者がいると感じることがある
など
ストレスを感じている多発性骨髄腫患者さんのご家族
こうした気持ちは、一人で抱え込まずに話せる相手に相談したり、少しだけでも休息の時間を持ったりすることが大切です。
自分の心を整えることが、結果的に患者さんへのよりよいサポートにもつながります。
不安や戸惑いを感じたときは、相談窓口や医療者に声をかけることから始めてみましょう。
出典
1)Hamano J. et al.: Psychooncology. 27(1), 302-308, 2018

家族関わり方

適度な距離感とは

ご自身のための時間も大切にしましょう1)
患者さんを支える毎日の中で、ご家族の方も心身の負担を感じることがあると思います。
無理をしすぎず、ときには「自分のための時間」を意識して過ごすことも必要です。
自分の時間を過ごす多発性骨髄腫患者さんのご家族
自分を大切にするためのヒント
介助や看病から少し離れる時間を予定に入れておきましょう
睡眠・運動・食事など、健康的な生活習慣を意識しましょう
健診や通院など、自分自身の健康管理も忘れずにしましょう
ときには、同じような立場のご家族と話す時間を持ってみましょう(気持ちが少し楽になることもあります)
ご家族が元気でいることが、患者さんの安心にもつながります。「少し休むこと」も、立派なサポートの一つです。
介助や看病から離れた時間を過ごす多発性骨髄腫患者さんのご家族

話を聞くときの姿勢

現状を共有し、つらいことでも患者さんの気持ちを伝えてもらいましょう1)
「どう感じているのか」「何を考えているのか」を共有することで、一緒に病気と向き合うための土台ができます。
話を聞くときに心がけたいこと
テレビを消し、スマートフォンからも目を離して、静かな環境をつくりましょう
リラックスした姿勢で、患者さんの目を見ながら話を聞くように心がけましょう
話の内容だけでなく、「どんな気持ちで話しているのか」も想像してみて、わからなければ、やさしく質問をしてみましょう
話の途中で遮ったり、議論になってしまったり、批判したりしないように気をつけましょう
「あなたのことを大事に思っているよ」という気持ちが伝わるように、お互いに思いやりを持って接しましょう
ご家族自身が不安を感じているときは、遠慮せずに伝え、患者さんと一緒に乗り越える姿勢を持ちましょう
お茶を飲みながら、多発性骨髄腫患者さんの話を聞くご家族
「しっかり支えなくては」と思うあまり、つい言葉に詰まってしまうこともあるかもしれません。
大切なのは、正しいことを言おうとすることよりも、「そばにいるよ」という気持ちを伝えることです。

望ましくない対応と代替案

がんと向き合う中で、患者さんとご家族は「チーム」の一員同士と考えてみましょう1)
患者さんが抱える思いや不安に寄り添いながら、ともに歩む姿勢が、治療や療養生活の大きな支えになります。
どんな対応が大切?1)
望ましくない対応の例NG 好ましい対応の例OK
できない・わからないと決めつける。話しても仕方がないからと相談をためらう お互いに支え合う・助け合うつもりで、その方法を探す
病気だからといって、患者さんが
自分でできることまでやってしまう
患者さんが得意なことを確認し、できることはお願いする
お世話をしても感謝の言葉がなく、
悲しくなる
まずは患者さんへ、小さなことでも感謝の気持ちを伝える
困ったことがあってもがまんしてしまう 困ったことがあれば患者さんにも相談する。協力し合って解決方法を探す
心配事ばかり口にするようになったが、気にしすぎているようだからと真剣に考えていない お互いに心配なことは真剣に受け止める。意見が異なる場合も、お互いの意見を尊重する
患者さんの病気のことばかり考えてしまう 病気以外のことにも目を向ける
全部自分でやらなければと思ってしまう ご家族以外にも援助を求める選択肢を持っておく
Northouse LL. et al.: Semin Oncol Nurs. 28(4), 236-245, 2012より作表
※制度の活用については、「治療費とサポート制度」もご参照ください
多発性骨髄腫患者さんを囲んで、テーブルで話すご家族

患者さんの気持ちの変化

がんと診断された患者さんは、診断の瞬間から治療の過程、再発や病気の進行などを通して、大きなストレスを受け、気持ちが落ち込むことがあります。
このようなストレスを受けたとき、人はさまざまな心理的な反応を示します。
ストレスを受けた直後の反応
診断直後などには、以下のような気持ちの変化が起こることがあります。
絶望感を感じる
事実を信じたくない、認めたくない
冷静に物事を考えられない
抑うつ、不安・無力感
不眠や食欲の低下
少し時間が経つと…
ストレスを受けて2週間ほど経つと、少しずつ落ち着き始め、現実を受け止め、これからのことを考えられるようになる方も多くいらっしゃいます2)
その中で、徐々にこれまでの生活に近い日常を取り戻していくことができます。
注意が必要なサイン
ただし、中には抑うつや不安などの症状が長く続いてしまう方もおり、治療や日常生活に影響が出ることがあります。
そのような場合には、早めに医師や看護師に相談することが大切です。
出典
1)Northouse LL. et al.: Semin Oncol Nurs. 28(4), 236-245, 2012
2)宮島 加耶 他: ストレス科学研究. 32, 4-9, 2017
このページは、多発性骨髄腫の疾患に関する情報サイトです。医療に関する判断は、患者さんの特性を考慮し、医師と患者さんとの相談の上で行うものです。
多発性骨髄腫について、詳しくは医師にご相談ください。多発性骨髄腫に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法などを推奨するものではありません。

NP-JP-NA-WCNT-250021 2025年9月

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